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東京地方裁判所 昭和48年(ワ)3869号 判決

原告

吉見利一

ほか一名

被告

塚原石産興業株式会社

ほか二名

主文

1  被告塚原石産興業株式会社及び被告名取幸俊は各自原告吉見利一に対し金二〇〇万一七七二円、原告池田純一に対し金一六万〇八〇〇円及び右各金員に対する昭和四八年五月二七日以降各完済まで年五分の割合による金員を支払え。

2  被告斉藤幸人は原告吉見利一に対し金一七〇万一七七二円、原告池田純一に対し金一六万〇八〇〇円及び右各金員に対する昭和四八年五月二七日以降各完済まで年五分の割合による金員を支払え。

3  原告らの被告らに対するその余の請求を棄却する。

4  訴訟費用は被告らの負担とする。

5  この判決は、原告ら勝訴部分につき仮に執行することができる。

事実

第一申立

(原告ら)

一  被告らは各自原告吉見に対し二一四万一七七二円、原告池田に対し一八万〇八〇〇円及び各金員に対する訴状送達の日の翌日以降完済まで年五分の割合による金員を支払え。

二  訴訟費用は被告らの負担とする。

三  仮執行の宣言。

(被告ら)

一  原告らの請求を棄却する。

二  訴訟費用は原告らの負担とする。

第二原告らの主張

(請求の原因)

一  事故の発生(本件事故)

1 日時 昭和四七年六月三〇日午後六時二五分頃

2 場所 長野県茅野市金沢木舟四六七三番地国道二〇号線

3 道路状況 歩車道の区別無、住宅地、舗装、制限速度時速六〇キロメートル。

4 被告車 大型貨物自動車(松本一さ三六八〇)

運転者 被告名取

5 原告車 普通乗用自動車(練馬五に六四八二)

運転者 原告吉見

同乗者 原告池田

6 態様 諏訪市方向から甲府市方向へ直進してきて右側待避所方向へ道路を右折横断しようとした被告車が、甲府市方向から諏訪市方向へ直進中の原告車の側面に衝突した。

7 原告吉見の傷害の部位・程度、治療経過、後遺症

〈1〉 頭蓋骨々折、脳挫傷、左前腕骨々折、左鎖骨々折

〈2〉 横井医院へ昭和四七年六月三〇日から同年一〇月二九日まで一二二日入院、通院三日、同年一二月末まで自宅療養

〈3〉 頭部及び顔面に著しい醜状残存、味覚、嗅覚障害、一部記憶喪失

8 原告池田の傷害の部位・程度、治療経過

〈1〉 頸部捻挫、背部挫傷、頭部打撲

〈2〉 横井医院へ昭和四七年六月三〇日から同年七月二三日まで入院二四日、通院なし。

二  責任原因

(一) 被告斉藤は被告車を所有使用し、被告会社は被告車を業務用に使用して、自己のため運行の用に供しているものである。

即ち、被告会社は肩書地において、常時大型ダンプトラツク約八〇台を管理使用して砂利の生産、販売、運搬等を営んでいるものであるが、被告会社はこれらダンプトラツクを自ら所有することはしないで、専ら大型ダンプトラツクを所有する専属的請負人をして、いわゆる白ナンバーによる砂利等の運搬をさせているものである。被告斉藤及び被告名取はいずれも大型ダンプトラツクを所有し、自己の使用人をして又は自らこれを運転して、被告会社の専属的請負人として砂利等の運搬を業としているものである。被告等には右のような専属的関係があるため、ダンプトラツクの車体には被告会社を表わす「塚原石産」と大書されている。本件事故当時、被告斉藤は大型ダンプトラツク二台を所有し被告会社の専属的請負人であつたところ、この頃被告斉藤は病気療養のため入院中であり、その所有する大型ダンプトラツク一台(被告車)が休車中であつた。一方おなじく被告会社の専属的請負人である被告名取は自己の所有する大型ダンプトラツクが故障修理中で本件事故当時使用不能であつたため、被告斉藤から有償で前記休車中の大型ダンプトラツク(被告車)の貸与を受け、これを被告会社の指示を受けて砂利等の運搬の業務に使用中に本件事故に至つたものである。

以上の次第であるから被告会社及び被告斉藤は、自賠法三条に基づき、被告車の運行使用者として、本件事故により原告らに生じた人身損害による賠償をすべき義務を負うものである。

なお、被告会社は、民法七一五条一項に基づき、被告会社の指揮監督に服する被告名取が被告会社の業務の執行中に発生させた本件事故により、原告吉見に生じた原告車の破損による損害を賠償すべき義務を負うものである。

(二) 被告名取はカーブのため見通しの悪い道路を右折横断して待避所に進入するに当り、対向車との衝突を回避するため、右折の合図を出した上センターライン附近で一時停止するか大幅に減速して安全を確認し、しかるのち対向車線に進入すべき義務に反し、前方注視を怠り、右折横断方法に反し、時速五〇キロないし四五キロに減速したにとどまり突如として対向車線に進入した過失により本件事故に至つたものである。

よつて被告名取は民法七〇九条に基づき、本件事故により原告らに生じた損害を賠償する義務を負うものである。

三  損害

1 原告吉見の損害

(一) 治療費 五一万一九四〇円

(二) 入院付添費(親族付添) 一三万二〇〇〇円

当初六〇日間、一日当り一二〇〇円、その後六〇日間、一日当り一〇〇〇円

(三) 入院雑費 三方六六〇〇円

入院一日当り三〇〇円、一二二日分

(四) 休業損害 一六万一二三二円

原告吉見は事故当時、カンロ株式会社に勤務し月収七万六〇〇〇円を得ていたものであるが、本件事故のため昭和四七年六月三〇日から同年一二月三一日まで六月間同社を欠勤するのやむなきに至り、この間四五万六〇〇〇円の給与を得られず損害を受けたが、原告吉見の属する健康保険組合から傷病手当金として二九万四七六八円の損害の填補を受けたので、これを控除すると、原告吉見の休業損害は一六万一二三二円となる。

(五) 慰藉料 一二〇万円

原告吉見は、事故後七日間にわたり全く意識を失い人事不省の状態にあつたのみでなく、入院直後の三日間は、医師から生命は保証できないと宣告された程の重態であつた。右の他、原告吉見の前記傷害の部位・程度、治療経過、後遺症等の諸事情を勘案し、原告吉見の慰藉料は一二〇万円が相当である。

(六) 原告車の全損による損害 三〇万円

(七) 弁護士費用 三〇万円

着手金一〇万円、謝金二〇万円

2 原告池田の損害

(一) 治療費 一一万六九二〇円

(二) 入院雑費 四八〇〇円

入院一日当り二〇〇円の二四日分

(三) 休業損害 四万七九〇九円

原告池田は本件事故当時カンロ株式会社に勤務し月収六万二五〇〇円を得ていたものであるが、本件事故のため昭和四七年六月三〇日から同年七月二三日まで二三日間同社を欠勤するのやむなきに至り、この間四万七九〇九円の給与を得られず損害を受けた。

(四) 慰藉料 一五万円

(五) 弁護士費用 五万円

着手金二万、謝金三万。

四  損害の填補

自賠責保険から、原告吉見は五〇万円、原告池田は一八万八八二九円を受領し、損害の一部填補を受けた。

五  結び

よつて原告吉見は二一四万一七七二円、原告池田は一八万〇八〇〇円及び各金員に対する訴状送達の日の翌日以降完済まで民法所定の年五分の割合による遅延損害金の支払を求める。

(抗弁に対する答弁)

抗弁事実を否認する。被告車は完全に対向車線を塞ぎ、しかも、対向車線のセンターライン寄りではなく、左側端を進行してきた原告車に衝突したものであるから、被告名取が左転把したことはない。

第三被告らの主張

(請求の原因に対する答弁)

一  請求の原因一の事実中、原告吉見の後遺症に関する事実を除くその余の事実は認める。

原告吉見の後遺症に関する事実は不知。

二  (一)請求の原因二の(一)の事実中、被告斉藤が被告車の運行供用者である事実、被告会社は大型ダンプトラツクを管理使用して砂利の生産、販売を業とし、ダンプトラツクを所有する請負人との間で請負関係を持つているものであり、被告斉藤、被告名取との間でも請負関係にあつた事実、これらの大型ダンプトラツクの車体に被告会社名の記入のあつた事実は認める。

同二の(一)の事実中、被告会社が被告車の運行供用者であるとの事実、被告会社と被告斉藤、被告名取との請負関係が専属的であるとの事実は否認する。また被告会社との間で請負関係のある請負人所有のダンプトラツクは約六〇台である。また被告会社が使用者責任を負う旨の主張は争う。

(二)請求の原因二の(二)の事実中、被告名取に過失のあつた事実は認める。

三  請求の原因三の事実は争う。

四  請求の原因四の事実は認める。

(抗弁、過失相殺)

原告吉見は制限速度に違反し、時速八〇キロ位の速度で前方注視義務を怠つたまま進行したために本件事故に至つたものである。被告名取は前方に原告車を認めたが、原告車が時速六〇キロとすれば横断できると考え、横断を開始したところ、原告車があまりに急速に接近してきたので驚いて左に転把し急制動の措置をとつたがおよばず衝突するに至つたものである。

よつて原告吉見の過失を斟酌し賠償額を減額すべきである。

第四証拠〔略〕

理由

一  事故の発生

請求の原因一の事実中、原告吉見の後遺症に関する事実を除くその余の事実は当事者間に争いがない。

〔証拠略〕によると、原告吉見は本件事故のため主張の傷害を受け、当初七日間位は意識喪失の状態であり、主張の治療を受け、この間頭部、左腕等に数回にわたつて手術を受けたが、前額部に長さ約一〇センチ、幅約一ミリの瘢痕、右上腕部に長さ約一五センチ、幅約二ミリの瘢痕が残り、左前腕の外転運動に障害があり、殊に左前腕を屈曲させて外転させたり、左手を握りしめると疼痛を感じる状態であり、また味覚と臭覚に障害のある、後遺症が残つた事実が認められ、これに反する証拠はない。

二  責任原因、過失相殺

(一)  請求の原因二の(一)の事実中、被告斉藤が被告車の運行供用者の地位にあることは当事者間に争いがない。よつて被告斉藤は被告車の運行に因る本件事故に因つて原告らに生じた損害を賠償する義務を負うものである。

つぎに被告会社の運行供用者責任及び使用者責任の点について判断する。請求の原因二の(一)の事実中、被告会社は大型ダンプトラツクを管理使用して砂利の生産、販売、運搬を業とし、ダンプトラツクを保有する請負人との間で請負関係を持つているものであり、被告斉藤、被告名取との間でも請負関係にあつた事実、これらダンプトラツクの車体には被告会社名が記入されている事実は当事者間に争いがない。〔証拠略〕によるとつぎの事実が認められ、この認定を左右するに足りる証拠はない。被告会社は長野県下に四カ所の砂利採石場ないし工場を有する砂利の生産、販売、運搬等を業とする会社であるが、約八台の自社所有のダンプトラツクを管理使用している他は、延べ約五〇台のダンプトラツクを保有する請負人との間で請負関係を持ち、工場長らをして、これら請負人らを指揮監督させて右の業務を行つているものであり、一月毎に運搬した積載量と運送距離とにより算出した出来高による報酬を請負人らに支給している。これらダンプトラツクの多くは車体に被告会社名を記入してあり、黄色に塗装されているが、塗装に要した費用の半分を被告会社が負担していることもある。被告会社は工場毎に毎月一回程度、請負人も参加することのある朝令において、交通安全教育等を行つている。被告斉藤はダンプトラツク二台を、被告名取はダンプトラツク一台を保有して被告会社との間で右に見たと同じ形態の請負関係を持ち、自ら又は使用人をしてダンプトラツクを運転し、被告会社の砂利の運搬等の業務を行つてきたものであるが、本件事故当時、被告斉藤は健康を害し、本件被告車のダンプトラツク一台が休車中であり、被告名取の保有車は故障修理中であつたため、被告名取は、被告斉藤から、本件事故の四日程前から被告車を有償で借り受け、被告会社との請負関係に基づき、被告会社工場長らの指示を受けて前記業務のためこれを使用中本件事故に至つたものである。被告斉藤は従前被告会社との間の右業務の他にも他の会社の砂利等の運搬のために被告車を利用することもあつた。

右事実によると、被告会社は、その業務内容の主要部門を構成すると推認し得る砂利の運搬等の業務の大部分を、自車保有車によるよりも、大型ダンプトラツクを保有する請負人との間の請負関係に依存しているものであり、被告名取による本件事故当時の被告車の運行も右の関係の一環をなすものである。したがつて被告会社は右の請負関係を通じ被告車を指示制禦することができ、かつ、指示制禦すべき立場にあつたものであり、これにより利益を得ていたものと認められる。また被告会社は右の請負関係を通じ、被告名取を実質的に指揮監督する立場にあつたものであり、後に認定する事実をも勘案すると、被告名取は、被告会社の前記業務の執行中、その過失により本件事故に至つたものである。そして右の認定判断は、被告斉藤が被告車を被告会社との間の右の業務の他にも他の会社の砂利等の運搬に利用することのあつた事実を勘案しても、左右されるものではない。

してみると被告会社は、自賠法三条に基づき、被告車の運行供用者として原告らに生じた人身損害による賠償義務を負う他、民法七一五条一項に基づき、被告名取の使用者として、原告吉見に生じた後記原告車の破損による損害を賠償する義務を負うものである。

(二)  請求原因二の(二)の事実中、被告名取に過失のあつた事実は当事者間に争いがない。よつて被告名取は民法七〇九条に基づき原告らに生じた損害を賠償する義務を負うものである。

(三)  そこで被告らの過失相殺の抗弁について判断する。

1  本件事故現場は歩車道の区別のない舗装道路で、制限速度は六〇キロである事実、諏訪市方向から甲府市方向へ直進してきて右側待避所方向へ道路を右折横断しようとした被告車が、甲府市方向から諏訪市方向へ直進中の原告車の側面に衝突した事実は当事者間に争いがない。

2  右事実に、〔証拠略〕によると、被告名取は被告車を運転して衝突地点から約四二メートルに接近した頃、前方右側待避所に知人の唐沢富一を発見し、道路を右折横断しようと考え右折の合図をし、また、前方約一〇〇メートルの対向車線上に原告車が対向直進してくるのを発見したが、さらに約二三・八メートル進行した頃、唐沢富一に声をかけたりして前方対向車線上の原告車の動静に対する注意を欠いたまゝ時速約四五キロの速度で待避所方向へ右折進行しつつ原告車を見ると、約三五メートル進行して前方約四一・五メートルの位置に接近しているので急ブレーキの措置をとり、原告車も急ブレーキの措置をとつたがおよばず、被告車の右前部と原告車の右前部、右側面とが衝突した事実が認められ、右認定の一部に反する〔証拠略〕は、にわかに採用し得ない。

3  右事実によると、被告名取は道路を右折横断するに当り、徐行義務と前方注視義務に違反し、時速約四五キロの速度で進行しつつ、前方約四一・五メートルの位置に優先通行権を有する原告車が接近しているのに、その直近で、横断を開始したものであつて、その過失は大きい。もつとも原告車としても右事実から推算すると制限速度に違反し時速約六六キロ位で進行していたものと推認することができるのであり、また格段の事情の立証のない本件においては、被告車の右折合図を確認し得たものと推認し得るので、原告車吉見としても減速進行して危険を回避することが期待されるのであるから、自己に対する過失としての不注意は否定し得ない。しかし原告吉見の右の不注意は被告名取の右折様式の不適切さとその過失の大きさに比べて軽微であるから、原告吉見の慰藉料の算定に当つて斟酌するにとどめるのが相当である。

被告らの過失相殺の抗弁は右の限度で理由がある。また原告池田の損害の算定に際し、過失相殺に当つては、原告吉見の不注意はいわゆる被害者側の過失に該当する旨の主張立証もなく、〔証拠略〕によるとかえつて原告らは勤務先における同僚関係にすぎず、いわゆる被害者側に該当するものではないと認められるので、原告池田の損害の算定に当り過失相殺を適用するに由ないものである。

三  損害

1  原告吉見の損害

(一)  治療費 五一万一九四〇円

〔証拠略〕によつて認める。

(二)  人院付添費 一三万二〇〇〇円

〔証拠略〕によると原告吉見の前判示入院期間中、原告吉見の親族が付添看護したことが認められる。そして前判示原告吉見の傷害の部位、程度に照らすと原告吉見は入院期間中付添看護を要したものと認められ、付添費として主張の算出根拠のとおり、少くとも一三万二〇〇〇円を要したものと推認し得る。

(三)  入院雑費 三万六六〇〇円

前判示原告吉見の入院期間に照らし、少くとも主張の三万六六〇〇円を要したものと推認する。

(四)  休業損害 一六万一二三二円

前判示原告吉見の傷害の部位、程度、治療経過に関する事実に、〔証拠略〕によると、原告吉見は事故当時カンロ株式会社に勤務し、少くとも月収七万六〇〇〇円を得ていたものであるが、右事故のため昭和四七年七月一日から同年一二月三一日まで、同社を欠勤するのやむなきに至り、この間六月分四五万六〇〇〇円の報酬を得られず損害を受けたことが認められるが原告吉見はこのうち二九万四七六八円をその属する健康保険組合から填補受領した旨自陳しているのでこれを控除すると、一六万一二三二円となる。

(五)  慰藉料 一一〇万円

前判示原告吉見の傷害の部位、程度、治療経過、後遺症の程度、原告吉見の前判示不注意その他本件口頭弁論に顕れた諸般の事情に照らすと原告吉見の慰藉料は一一〇万円を下まわらない。

(六)  原告車の破損による損害 三〇万円

〔証拠略〕によつて認める。

2  原告池田の損害

(一)  治療費 一一万六九二〇円

〔証拠略〕の結果によつて認める。

(二)  入院雑費 四八〇〇円

前判示原告池田の入院期間に照らし、少くとも主張の四八〇〇円を要したものと推認する。

(三)  休業損害 四万七九〇九円

前判示原告池田の傷害の部位、程度、治療経過に関する事実に、〔証拠略〕によると、原告主張の請求の原因三2の(三)の事実が認められる。

(四)  慰藉料 一五万円

前判示原告池田の傷害の部位、程度、治療経過、その他本件口頭弁論に顕れた諸般の事情を斟酌すると原告池田の慰藉料は主張の一五万円を下まわらない。

四  損害の填補

請求の原因四の事実は当事者間に争いがない。

五  弁護士費用

〔証拠略〕によると、原告らは、被告らが任意の支払に応じないため、本件取立を原告ら訴訟代理人に委任し、着手金として原告吉見は一〇万円、原告池田は二万円を既に支払い、謝金として原告吉見は二〇万円(合計三〇万円)、原告池田は三万円(合計五万円)、を支払う約束をしている事実が認められる。そして本件事案の性質、難易度、認容額等の諸般の事情に照らすと、被告らに支払を命ずべき弁護士費用の本件事故時の現価は原告吉見につき二六万円、原告池田につき三万円とするのが相当である。

六  結論

以上の次第であるから原告らの本訴請求は原告吉見が被告らに対し各自二〇〇万一七七二円(但し被告斉藤に対しては自賠法三条に基づく請求であるから原告車の破損による損害を除く一七〇万一七七二円)、原告池田が被告らに対し各自一六万〇八〇〇円及び各金員に対する訴状送達の日の翌日であること記録上明らかな昭和四八年五月二七日以降各完済まで民法所定の年五分の割合による金員の支払を求める限度で理由があるので認容し、原告らのその余の請求は理由がないので棄却することとし、訴訟費用の負担につき民訴法九二条、九三条、仮執行の宣言につき同法一九六条を各適用して主文のとおり判決する。

(裁判官 宮良允通)

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